遠方の親の話を聞く — オンライン通話で始める人生の聞き取りと残し方

写真はイメージです
帰省の2泊3日では、昔話まで届かない
盆と正月に帰って、親の顔を見て、近況を聞いて、気づけば帰りの電車に乗っている。そんな帰省を重ねるうちに、「若いころの話をちゃんと聞いたことがない」と気づく人は少なくないようです。
実家が遠いと、まとまった時間をとるのは難しくなります。それでも、帰省とは別に、通話で少しずつ聞くという方法があります。1回は短くて構いません。続けるほど、親の人生の輪郭が見えてきます。
親の機器への慣れ方で、段取りが変わる
遠方の親の話を聞くとき、最初に分かれ道になるのは話の中身ではなく、親がどこまで通話に慣れているかです。状況ごとに、準備の置きどころが違います。
| 親の状況 | 先にやっておくこと | 向いている形 |
|---|---|---|
| ふだんからビデオ通話をしている | 録画・録音の許可をとるだけ | そのままビデオ通話で聞く |
| 電話はできるが、ビデオは不慣れ | 本題の前に、顔を映すだけの練習を1回 | まず音声通話。慣れたらビデオへ |
| 機器が苦手、または端末を持っていない | 近くに住む家族や親戚に、立ち会いを頼めるか相談 | 立ち会いのもとで通話、または帰省時に対面で聞く |
| 耳が遠い | 親側にイヤホンやスピーカーを用意してもらう | 質問を短く区切り、ゆっくり話す |
機器が苦手な親には、操作を教えるより「当日は電話に出るだけでいい」状態にしておくほうが負担が軽くなります。着信ボタンを押すだけの設定を、帰省のときに一緒に済ませておくと安心です。
1回は20〜30分、頻度は月1〜2回が続けやすい
オンラインの聞き取りは、長く話すほど画面越しの疲れが出ます。目安は1回20〜30分です。親が話し足りなさそうなら、次回に続きを回します。
毎回「今日はこの時期だけ」と範囲を決めると、話が散らかりません。たとえば次のような順です。
- 子どものころに住んでいた町と、家族のこと
- 学校を出てからの仕事や、最初の職場
- 結婚や暮らしの節目、人生で大きな決断をしたとき
質問に迷ったら、親に聞いておきたいこと30から1つだけ選んで送っておく方法があります。前もって伝えると、親も思い出す時間がとれて、当日の話が深くなります。
録画・録音は「事前に伝えて、2か所に残す」
通話の記録を残すなら、必ず先に親へ伝えて、了承をもらいます。話しているうちに録られていたと知ると、親は構えてしまいます。
- ビデオ通話の録画機能: 多くの通話アプリに備わっています。ただ、親側の通信が不安定だと映像が乱れるので、声だけは別に残すと確実です。
- 別の端末での録音: 手元のスマホやICレコーダーを通話の音声に近づけて録ります。通話が途切れても、自分側の声は残ります。
- 保存場所は2か所: スマホの中だけにせず、パソコンやクラウドにも写しておきます。ファイル名に日付と話題を入れておくと、後で探せます。
録音した声の活かし方は、親の声を残す方法にもまとめています。
通話では足りないと感じたときの選択肢
通話の聞き取りには限りがあります。画面の向こうでは、親の表情の細かな動きや、その場の空気までは拾いきれません。自分で聞くと、どうしても子としての遠慮も出ます。
人生を聞く時間そのものを、プロの聞き手に任せるという道もあります。LIFE STORY(株式会社アキグラ)は、インタビューから始める終活映像サービスで、入口のSESSIONは55,000円(税込)からです。撮影・取材はご本人の同意のうえで行います。まず通話で自分で聞いてみて、足りなさを感じたときの次の一手として、頭の片隅に置いておく程度で十分です。
親に写真を手元に置いてもらうと、話が動き出す
何もないところから昔話を始めるのは、親にとっても難しいものです。通話の前に、実家のアルバムから1〜2冊を出しておいてもらうと、写真をカメラにかざしながら話せます。写真の選び方や整理の進め方は、実家のアルバム整理の手順が参考になります。
聞くときは、答えを急がせないことです。沈黙が数秒続いても、親は記憶をたどっています。「その写真、いつごろ?」「そこにいたのは誰?」のように、短く具体的に尋ねると、話が続きやすくなります。
通話で集めた話を、将来ひとつの映像にまとめたくなったときは、自分史動画の制作の考え方が手がかりになります。全体像は親の人生を残すにはで整理しています。
次の帰省の前に、15分だけ電話をかける
2泊3日の帰省で時間が足りないと感じたなら、帰省の前後に通話を足せば、話を聞く機会は増えます。いきなり本格的な聞き取りを始めなくても、「今度、昔の仕事の話を聞かせて」と一言伝えることが最初の一歩になります。
次に実家へ帰る前の晩、15分だけ電話をかけて、1つだけ質問してみてください。前回の通話で聞いた話を足がかりにできるので、帰省で顔を合わせたときには、前よりも少し深い話から始められます。

この記事の監修
中井 敦(LIFE STORYプロデューサー・TVドキュメンタリー出身)
株式会社アキグラ代表。NHK 東日本大震災復興特別番組の中継ディレクターほか、テレビ・YouTube のドキュメンタリー番組のディレクションを担当。プロフィール詳細
※ 本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、医療・法律・税務の専門的な助言ではありません。株式会社アキグラおよび執筆・監修者は、これらの分野の専門資格を有していません。個別のご判断は各分野の専門家にご相談ください。